胚移植について
こんにちは、培養部です。 今回は「胚移植」について紹介します。
胚移植は、受精した卵を子宮の中に移植することです。
当院では、「新鮮胚移植」と「凍結融解胚移植(胚盤胞もしくは分割胚)」を実施しています。
当院における「新鮮胚移植」と「凍結融解胚移植」
新鮮胚移植
新鮮胚移植は採卵と同じ周期に胚移植を行います。
そのため、移植後の妊娠判定まで1周期で終了します。
(採卵、受精操作、受精の確認、胚の育ち方については下記リンクから各ページに飛べます。)
凍結融解胚移植
凍結融解胚移植は、受精卵や胚を培養後に液体窒素(-196℃)で凍結保存します。
次周期にエストラーナテープを使用してエストロゲンを補充し、子宮内膜を育てます。
移植日が決定したら、当日に胚を融解して移植をします。
凍結融解胚移植は「採卵の周期」と「移植の周期」で2周期かかりますが、
凍結融解胚移植は新鮮胚移植よりも妊娠率が高いことが特徴です。
当院における2022年の新鮮胚移植と融解胚移植の妊娠率
|
ET 数 |
臨床妊娠数 |
臨床妊娠率 |
新鮮胚移植 |
40 |
7 |
19.6% |
凍結胚移植 |
867 |
371 |
41.7% |
当院では、胚盤胞もしくは分割胚の凍結融解胚移植を行っております。
胚盤胞の凍結融解胚移植
採卵・受精操作翌日の受精卵を胚盤胞まで培養した後に凍結します。
胚盤胞移植の場合は、移植日当日に対象の胚を融解します。
胚盤胞と透明帯について
胚盤胞は透明帯という透明な殻に包まれています。
黒い矢印が透明帯です。
スコア5になると胚は透明帯から脱出し始めます。スコア6は透明帯から完全に脱出した状態です。
アシストハッチング(アシストハッチング・AHA)について
卵の透明帯が固く厚いと、胚は透明帯から脱出するのに時間が掛かってしまい、
着床のタイミングを逃してしまうことがあります。
そこで、当院では移植後に着床しやすくするために、アシストハッチングAHAを行っています。
当院ではレーザーを用いて透明帯に孔をあけています。
レーザーでは胚のダメージを与えることなく開孔することができます。
透明帯はのちに溶けて消失しますので、赤ちゃんの一部にはなりません。どうぞご安心ください。
※胚のグレードによって実施しないこともあります。
分割胚の凍結融解胚移植
受精卵は途中で成長が止まることがあります。
この方法では受精卵を胚盤胞まで培養せず、受精が確認できた日に凍結します。
次周期にエストラーナテープを使用してエストロゲンを補充し、子宮内膜を育てます。
移植日が決定したら、受精卵を融解して培養2~3日後に分割胚の状態で移植します。
移植する胚の個数について
移植では、グレードの良い胚を優先して移植します。
移植は、多胎リスクの高い35歳未満の初回治療周期では胚移植数は原則1個です。
ただし、「35歳以上の女性」 または 「2回以上続けて妊娠不成立であった女性」については、
2個移植が許可されています。
次回は「精巣内精子回収術(TESE)」について解説します✿