不育症検査
不育症とは
不育症とは、「妊娠はするものの流産や死産を繰り返して、赤ちゃんをもつことができない状態」をいいます。
流産を2回続けて繰り返すことを「反復流産」、3回以上続けて繰り返すことを「習慣流産」と呼びます。
初期の流産の50~70%は受精卵の染色体異常でおこるものですが、ご夫婦のどちらかに流産の原因がある場合があります。
着床前遺伝子検査はこちら
不育症リスク因子としては、抗リン脂質抗体陽性や、第12因子、プロテインS欠乏などの血液凝固能異常、夫婦の染色体の構造異常、子宮形態異常などがあります。
当院では、2回流産を繰り返す患者様に、原因を特定するため下記検査を受けていただいております。
不育症スクリーニング検査項目
抗リン脂質抗体検査
妊娠中に血栓ができやすくなる体質があるかを調べる検査です。
抗リン脂質抗体が陽性の場合、胎盤への血流が妨げられ、流産や胎児発育不全のリスクが高まることがあります。
検査項目:
- ループスアンチコアグラント定性
- 抗カルジオリピンβ2グリコプロテインI複合体抗体
- 抗CL抗体IgG、IgM
- 抗PE抗体IgG、IgM
血液凝固検査
血液が**必要以上に固まりやすい体質(血栓性素因)**があるかを調べます。
血液の凝固に関与するタンパク質の活性を調べることで、将来の妊娠中のリスクを予測します。
検査項目:
- プロテインS活性
- プロテインC活性
- 第Ⅻ因子凝固活性
- PT
- APTT
遺伝子検査(ご夫婦の染色体検査)
ご夫婦それぞれの染色体に異常(転座や逆位など)がないかを調べます。
染色体異常がある場合でも、健康に問題がないことが多いですが、流産の原因となる可能性があります。
治療法
検査結果に基づき、以下のような抗血栓療法を行うことで、血流を保ち、流産を予防します。
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ヘパリン注射(皮下注射):血液を固まりにくくする薬です
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アスピリン錠(内服薬):血栓ができにくい状態を保ちます
これらの治療により、胎児への血流を維持し、流産を防ぐことが期待されます。
抗リン脂質抗体症候群とは?
「リン脂質」は、体の細胞の膜を構成する大切な成分です。
これに対して異常な抗体(抗リン脂質抗体)が作られることで、血管の内側が攻撃されて血栓(血のかたまり)ができやすくなる病気が「抗リン脂質抗体症候群」です。
血栓ができると、子宮内の血流が悪くなり、胎児に十分な栄養や酸素が届かなくなることで、流産の原因になると考えられています。
凝固因子の異常について
血液は、出血を止める「凝固」と、固まりすぎを防ぐ「線溶」が、うまくバランスを取って働いています。
【重要な凝固関連因子】
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プロテインS
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プロテインC
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第12因子
これらは肝臓で作られるたんぱく質で、血液を適度に固める働きをしています。
これらの因子が不足していると、血液が過剰に固まりやすくなり、血栓ができやすくなります。
その結果、胎盤への血流が妨げられ、流産のリスクが高くなることが知られています。
原因を明らかにし、早期に治療を始めることで、多くの方が無事に妊娠・出産されています。
流産を繰り返す方や、不育症と診断された方も、希望を持って治療を続けていただけます。
不安なことがあれば、医師やスタッフまでお気軽にご相談ください。