体外受精・顕微授精
これまでの治療(タイミング法・人工授精など)で妊娠が成立しなかった場合に適用されるのが、「高度生殖補助医療(ART)」です。代表的な方法として、**体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)**があり、不妊治療におけるもっとも進んだ治療法のひとつです。
卵管の閉塞や、精子の数が非常に少ないといったケースで有効とされます。
受精方法
体外受精(IVF)
採取した卵子と精子を体外で一緒に培養、自然に受精させる方法
メリット:体内に近い自然な方法で受精でき、卵子がやや未熟だった場合にも受精の可能性があります。
デメリット:受精しないこともあり、受精障害が起こる可能性があります。
顕微授精(ICSI)
採取した1個の卵子に1匹の精子を直接注入して受精させる方法
適用例:精子の数が極端に少ない、運動性が低い、過去に受精障害があった場合など。
メリット:精子の状態が悪くても、受精が期待できます。
デメリット:人工的な操作が必要で、未熟な卵子には実施できません。
Split-ICSI(IVF+ICSI)
卵が多く採取できた場合、受精障害のリスクを下げるために、一部を通常の体外受精、残りを顕微授精する方法です。
例:10個採卵→5個はIVF、5個はICSI
メリット:全ての卵が受精しないリスクを回避できます。
デメリット:本来必要のない顕微授精を行う可能性があります。
🐣胚の発育と観察
胚の育ち方について、培養ブログで詳しく説明しています。
採卵後の受精卵(胚)は、タイムラプスインキュベータで培養、観察されます。これにより、胚の成長過程を連続的に記録・評価することができます。

受精卵分割グレード
🌱胚移植の種類
胚移植には2つの方法があります。
新鮮胚移植
採卵を行った同じ周期内に胚を移植します。子宮内膜の状態が良好で、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスクがない場合に行われます。
凍結胚移植
採卵周期とは別のタイミングで、凍結保存した胚を融解して移植する方法です。OHSSのリスクがある方や、子宮内膜の状態が不十分な場合に選択されます。
🔍 アシストハッチング(孵化促進法)
胚が透明帯という膜に包まれているため、着床しやすくするためにこの膜に小さな穴をあけたり、薄くしたりする処置です。
-
方法:レーザー照射(当院で使用)・化学的処置・ガラス針など
-
対象例:凍結胚移植の際、透明帯が硬くなっている場合など
📅採卵から移植までのスケジュール
準備周期(月経3~5日目に来院)
ご夫婦の感染症検査・精液検査・子宮内カテーテル検査などを行います。
卵巣刺激開始(月経2~3日目から開始)
排卵誘発剤(飲み薬・注射)で卵胞を育てます。
超音波で卵胞の成長を確認しながら約10〜14日かけて準備します。
採卵
採卵日の約36時間前に排卵誘発の注射を行います(時間指定あり)。
採卵は日帰りで行います(静脈麻酔or局所麻酔あり)。
胚移植(新鮮または凍結)
採卵の2〜5日後に新鮮胚移植を行うか、受精卵を一度凍結して凍結融解胚移植を行います。
❄ 凍結融解胚移植の方法
● ホルモン補充周期での移植
-
月経3日目までに診察 → ホルモン剤内服開始
-
15日目ごろ再診 → 子宮内膜の状態を確認 → 約1週間後に移植
● 自然周期での移植
-
自然な排卵のタイミングを、尿検査や超音波で確認しながら日程を調整
-
排卵が確認できたら数日後に移植します
いずれの方法も、移植から約10日後が妊娠判定日です。