胚の育ち方(分割段階、グレード)
こんにちは、培養部です。
今回は胚の育ち方について紹介します。
胚とは、正常に受精し分割を始めた受精卵のことです。
胚の分割段階
胚はガス濃度や温度などを生体内に近づけた培養庫で培養し、主に1、2、5、(6、7)日目に観察します。
培養1日目
培養1日目は受精の確認を行います。 受精については前回投稿していますので今回は省略させていただきます。
培養2日目
培養1日目は1つの細胞の塊ですが、ここから細胞分裂を繰り返し、2細胞→4細胞→8細胞と分割します。
この時期の胚を分割期胚といいます。 胚が8細胞以上に分割すると、細胞同士が接着し桑実胚になります。
培養2日目はこの分割期胚(2細胞期~8細胞期)の状態になります。
培養5~7日目
先程の桑実胚が胞胚腔といわれる隙間を作って広がりはじめ、胚盤胞という状態になります。 成長の早い胚は、5日目には胚盤胞になります。まだ胚盤胞まで到達していない胚は最長で7日目まで観察します。 この胚盤胞は収縮と拡張を繰り返しながら透明帯から孵化を始め、完全に脱出します。
順調に成長すると、このように胚盤胞になりますが、なかには分割が止まってしまったり、 分割した細胞同士が接着しなかったりして、成長が停止してしまう胚もあります。
当院では、ほぼ全ての患者様の胚をタイムラプスインキュベーターで培養しております。
タイムラプスインキュベーターについてこちらから
胚のグレード
胚のグレードは形態(見た目)で評価しています。胚を移植するときは、グレードの良い胚を優先します。
分割期胚
➀割球(細胞)の数、➁割球(細胞)の大きさ、➂フラグメントの量を考慮して評価します。
グレードはVeeck分類という評価方法でグレード1からグレード5に分類します。
(フラグメント:細胞の断片。ゴミのようなもの。)
たとえば、この画像の胚ですと、割球は4個、大きさは不均一で フラグメントがわずかにあるため、4-3Bとなります。
この画像の胚ですと、割球は8個、大きさは均一で フラグメントはありませんので、8-1となります。
胚盤胞
胚盤胞はGardner分類という評価方法で、以下の➀~➂の3点で評価します。
➀胚盤胞腔の広がりとハッチング
スコア1:胞胚腔ができ始めている初期胚盤胞。
スコア2:胞胚腔が全体の1/2以上の胚盤胞。
スコア3:胞胚腔が全体に広がった胚盤胞。
スコア4:胞胚腔が拡大し透明帯が薄くなった拡張胚盤胞。
スコア5:栄養外胚葉が透明帯の外に脱出し始めている。孵化中胚盤胞。
スコア6:透明帯より完全に脱出した胚盤胞。
このスコア1から順に成長していきスコア3以上になると、内細胞塊と栄養外胚葉の評価をします。
➁内細胞塊:胎児になる細胞塊(画像の青色の部分)
A:細胞同士が密に接着し、細胞数が多い
B:細胞同士の接着が粗で細胞が少ない
C:細胞数が非常に少ない
➂栄養外胚葉:胎盤になる細胞塊(画像のピンク色の部分)
A:細胞数が多く、互いに接着している
B:細胞数が少なく、結合が粗
C:細胞数が非常に少ない
右の画像は、左の画僧の胚に色を付けたものです。 この胚は、胞胚腔が拡大し透明帯が薄くなっているのでスコア4、
内細胞塊も栄養外胚葉も細胞数が多く接着しているので どちらもA評価で、4AAとなります。
胚移植の時にグレードをお伝えしていますので、参考にしてみてください。