着床前遺伝学的検査(PGT-A,PGT-SR)
★自費診療
★既に保険周期での凍結胚をお持ちの場合には、原則として、胚をすべて移植してからPGT-A・SR周期の開始となります。
PGT-Aができる患者様
- 体外受精を行い、これまで2回以上の胚移植が不成功である患者様
- 体外受精を行い、これまで2回以上流産を繰り返す患者様
PGT-SRができる患者様
- ご夫婦のどちらかに染色体構造異常がある患者様
着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)、着床前胚染色体構造異常検査(PGT-SR)とは
体外受精によって得られた胚盤胞から胎盤になる細胞を数個採取し、染色体の数(PGT-A)や構造異常(PGT-SR)を調べる検査です。
女性の年齢が高齢(35歳以上)になると、卵子の染色体異常の割合が高くなり、妊娠しにくくなり、妊娠しても流産しやすくなります。
そのような場合に、受精卵の段階で染色体の異常がないかを調べて、正常な胚だけを移植すれば流産を防止でき、妊娠率も向上することが期待されます。
染色体異常とは
ヒトは、両親からそれぞれ23本の染色体を受け継ぎ46本の染色体(23対)から構成されています。ですが、それぞれの染色体を1本ずつ両親からもらって、2本の染色体となるはずが、1本になったり3本になると不都合が生じて、胚が上手く成長することができません。そのような場合は多くが妊娠しない、着床しても流産や死産となってしまいます。このような染色体の数の異常や染色体の構造の変化を染色体異常と呼びます。
1.数の変化
卵子をつくる過程に起こりやすく、また母体の高齢化に伴いその頻度は増加することが知られています。染色体の数に変化がある場合、設計図としての情報量に過不足が生じるため、多くは流産になりますが出生に至る場合もあります。
2.構造の変化
- 均衡型転座
染色体量に過不足がなく、遺伝子を壊さない限りヒトの健康に影響はありませんが、「不妊症」「不育症」などの原因になります。
- 不均衡型転座
染色体の一部が余分であったり、染色体の一部が失われたりしています。生存率が低く、出生に至らない場合が多いです。
もし出生した場合は、学習障害、発達障害、健康問題等を有する可能性があり、その程度は染色体の変化によります。
遺伝子検査の流れ
①受診し、遺伝カウンセリングを受ける
②当院で体外受精し、胚盤胞まで胚を育てる
③胚盤胞まで発育した胚の一部を生検し、遺伝子検査に提出、胚盤胞は一旦凍結保存する
④2週間後に胚の遺伝子結果説明を受ける
⑤正常胚のみ後日移植、妊娠判定
★4種類(正常胚・異数胚・モザイク胚・判定不能胚)の結果が出ます。
★どの胚を移植するか、臨床遺伝の知識を持った医師が形態学的評価を考慮した上で決定します。ご不明の点がございましたら、受診いただき、医師にお尋ねくださいませ。
遺伝子検査のメリット・デメリット
メリット
PGT-A実施により異常のある胚を予め選択的に除くことにより、移植あたりの妊娠率の上昇、流産率の低下が期待されます。
初回妊娠までの時間の短縮が期待されます。
デメリット
100%確実な妊娠と出産を保証するものではありません。
検査をしても、染色体異常に起因しない流産は防ぐことができません。
当院患者様のPGT-Aでの移殖成績
下記のグラフは体外受精を行い、2回以上の胚移植不成功(反復ART不成功)である方を対象としたPGT-Aにより胚を選択し移植した患者様(オレンジ)と、PGT-Aせずに胚移植した患者様(水色)の妊娠率の比較です。(2022年受精着床学会当院報告)
今回の臨床研究においては、全ての年齢でPGT-Aを実施した患者様の妊娠率が高い結果となっております。
下記は、体外受精を行い、妊娠するも2回以上の流産(反復流産)の結果となった方を対象とし、PGT-Aにより胚を選択し移植した患者様(オレンジ)と、PGT-Aせずに胚移植した患者様(水色)の妊娠率、流産率の比較です。(2022年受精着床学会当院報告)
妊娠率においてはPGT-Aを実施した方の妊娠率が高くなり、流産率においてはPGT-Aを実施した方の流産率が低い傾向となっております。