凍結・融解について
こんにちは培養部です。今回は凍結・融解について紹介します。
〈凍結はどんなときにするの?〉
卵巣刺激症候群(OHSS)の場合
OHSSの疑いがある(卵胞が多い、エストラジオール値が高い)場合や、採卵後OHSSを発症した場合は、胚移植は行わず、胚を凍結保存します。
これはOHSSが妊娠することにより症状が悪化してしまうためそれを避けるためです。
子宮内膜が薄い場合
子宮内膜が薄いと、そのことが着床を阻害してしまう可能性がありますので、胚移植を延期し、胚を凍結します。
余剰胚の胚盤胞凍結の場合
移殖しなかった胚(余剰胚)が、胚盤胞まで発育した場合、その胚を凍結保存します。
PGT-Aなどの着床前診断を行う場合
PGT-Aでは遺伝子解析に用いる細胞の採取を行った後、胚盤胞の回復を見て速やかに凍結し解析結果が出るのを待ちます。
〈凍結するメリット〉
・胚を一旦凍結して母体のホルモン環境を整えて移植することで移植後のOHSSの回避や妊娠率が向上します。
・子育てのタイミングに応じて融解・胚移植を行うことができます。
・癌などの化学療法前に精子や卵子を凍結保存し、癌治療後に凍結していた卵子や精子を用いてARTを行うことができます。
〈卵子・胚の凍結と融解の原理とながれ〉
卵子・胚の凍結
当院では超急速ガラス化保存法と呼ばれるこれまで開発されてきた凍結方法の中で最も高い生存性が得られる方法で胚を凍結しています。
この方法は急速に液体窒素内で凍らせることで細胞内に氷晶を作らずに胚をガラス化させて保存する方法です。
また、生理的な溶液に浸した細胞をそのまま凍結してもほとんどの細胞は死滅してしまうため、凍結液には凍結保護剤が加えられています。細胞内液を低濃度の凍結保護剤に置き換えることで凍結時に起きる細胞の障害を防ぐ役割があります。
手技
凍結した胚は患者氏名、ID、採卵日、凍結日、保管タンク場所、凍結時胚の状態を記録し、必ずダブルチェックを行いながら採卵を行った月毎に液体窒素タンク内に保管しています。
卵子・胚の融解
融解時には、凍結時とは逆に高濃度の凍結保護剤を含む溶液から低濃度の凍結保護剤を含む溶液に入れていき、凍結保護剤を細胞内から抜いていきます。
手技
〈精子の凍結と融解の原理とながれ〉
精子の凍結
当院の精子の凍結保存ではより多くの精子をまとめて凍結するのに適した液体窒素蒸気凍結法を用いています。
精子は室温から0℃まで急激に冷却すると、構造と機能が損なわれやすいため、液体窒素上の蒸気で比較的ゆっくりとした冷却速度で凍結させてから液体窒素中で保存します。
手技
精子の融解
手技
約37℃の微温湯で融解(写真)させ攪拌密度勾配法にて洗浄し、凍結保存液を除去します。
〈凍結融解胚移植の当院の成績〉
当院2022年の新鮮胚移植と融解胚移植の妊娠率はこちらをご覧ください。
当院の凍結融解後の胚の生存率は99.6%と100%近くの高い生存性が得られています。当院の結果を見ていただけると分かるように凍結融解胚移植の方が新鮮胚移植より妊娠率が22.1%高いという傾向にあります。